特別代理人選任審判書における遺産分割協議書の合綴の有無
相続が発生した場合に、法定相続割合で相続をしない場合には相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
その時、相続人に未成年者がいる場合は、未成年者に代理人(特別代理人)を立てて、その代理人が未成年者の代わりに遺産分割協議をすることになります。
詳しくはコチラ→相続人に未成年者がいる場合の遺産分割協議
特別代理人を選任するには、家庭裁判所に「特別代理人選任の申立て」を行い、裁判所に特別代理人を選任してもらいます。
そして、無事に裁判所に特別代理人を選任してもらったら、裁判所から「特別代理人選任審判書」が交付されますので、当該審判書を利用して遺産分割協議を行い、相続手続き(不動産の名義変更登記など)を進めていくことになります。
特別代理人の選任審判書について
未成年者がいる遺産分割協議を行う場合に必要となるこの特別代理人の選任審判書ですが、その形式に関して次のような違いがあります。
① 審判書に遺産分割協議書案が合綴されているもの
② 審判書に遺産分割協議書案が合綴されていないもの
上記①②は裁判所によってその形式が異なるようです。
特別代理人の選任申立てを裁判所に行う場合には、遺産分割協議書の案分も裁判所に提出する必要があります。
①の場合には、その遺産分割協議書案が審判書に合綴されているので当該協議書案に基づいて遺産分割協議を進めていけばいいのですが、②の場合には遺産分割協議書案が合綴されていないので、裁判所が認定した遺産分割協議書案の内容と相違ない形で遺産分割協議を進める必要があり、若干の注意が必要です。
もし、裁判所に認定された遺産分割協議書案と異なる内容の遺産分割協議を、合理的な理由もなく成立させた場合には、特別代理人の善管注意義務違反を問われる可能性も出てくると思います。
特別代理人の善管注意義務
裁判所に認定された遺産分割協議書案のとおりに遺産分割協議を成立させた場合でも、現状(実情)に鑑みた場合に、当該協議書案の内容が未成年者に不利な内容となっていると判断される場合も考えられます。
そのような場合にも、特別代理人の善管注意義務違反が問われる可能性があります。
実際に、未成年者がその遺産分割協議書の内容が不服として、特別代理人を相手に善管注意義務違反を理由として損害賠償請求訴訟を提起し、特別代理人に対して損害賠償が命じられた裁判例もあります。
特別代理人は、原則として遺産分割協議書案の範囲で権限が拘束されるかと思いますが、一方で、いざ遺産分割協議を進めるとなった段階で、再度、相続財産等の現状(実情)を把握し、当該現状に則して未成年者保護の観点から遺産分割協議を成立させる義務があるので、思っているよりも特別代理人の責任は重いのかもしれません。
個人的には、一旦裁判所に認められた遺産分割協議書案があるにもかかわらず、あらためて未成年者保護の観点から遺産分割協議書の内容を考えないといけないのは、特別代理人にとって少し酷と感じますが、未成年者保護という主目的からはしょうがない部分もあるのかなと思います。