その他の主な登記
(1) 代物弁済(所有権移転登記)
代物弁済とは、債務者が本来の給付に代えて、他の給付をすることによって債権を消滅させることです。
例えば、お金を借りた場合はお金を返さなければいけませんが、これをお金ではなく不動産や債権、動産で弁済するということです。
つまり、本来すべき弁済(金銭)ではなく、代わりのモノ(不動産、債権、動産)で弁済する、これが代物弁済です。
そして、代物弁済をするには債権者の同意(代物弁済契約書)が必要です。勝手に代わりのモノで弁済することはできません。
また、この代わりに給付するモノは、債務の額と同等の価値である必要はなく、債務の額よりもその価値が高くても低くても、債権は全て消滅します。
しかし、代わりのモノが債務額よりも高い場合には、贈与税が課税される可能性があります。その場合には、差額の清算金を支払うことや、代わりのモノに相当する額の債権のみが消滅する旨の特約を付けるなど、税金が発生しないような対応策が必要です。
そして、不動産をもって弁済した場合には、債務者から債権者への代物弁済による所有権移転登記が必要になります。
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(2) 不動産の交換(所有権移転登記)
(1)不動産の交換とは
例えば、Aさんの所有する甲土地と、Bさんの所有する乙土地をその言葉通り「交換」することです。
この場合、AB間で「交換契約」を締結し、甲土地・乙土地について交換による所有権移転登記を行います。
(2)交換特例制度の適用
上記(1)の場合、AはBに甲土地を譲渡(売却)、BはAに乙土地を譲渡(売却)したものとして、通常、AとBにはそれぞれ譲渡所得税が課税されます。
しかし、下記の「固定資産の交換特例」の条件を満たせば、譲渡がなかったものとして譲渡所得税が課税されません。
- 交換する資産が土地と土地、建物と建物、同種類の固定資産であること
- お互いが1年以上保有した資産であり、交換するために取得したものでないこと
- 交換により取得した資産を、交換により譲渡した資産と同じ用途で使用すること
- 交換する資産額の差額が、交換する資産の時価のいずれか高い方の20%以内であること。
- 確定申告をすること
交換の際には、不動産の時価調査や、場合によっては分筆、そして農地の場合には農地法の許可等が必要になりますので、他士業と連携をしながら進めていくことが必要な場合があります。
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(3) 更正の登記
更正の登記とは、登記事項に錯誤や遺漏があった場合に、当該登記事項を訂正する登記を言います。つまり、間違ってした登記を直す登記のことです。
例えば、次のようなケースです。
(1) Aさん、Bさんの2人で買った不動産なのに、Aさん単独名義で登記をしてしまった。
⇒ AB共有名義に更正登記
(2) 所有権者から持分2分の1だけ買ったのに、持分3分の2で登記してしまった。
⇒ 持分の更正登記
(3) 不動産を「贈与」でもらったのに、登記の原因を「売買」で登記してしまった。
⇒ 登記原因の更正登記
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(4) 仮登記
(1)仮登記とは
登記をする実体的又は手続的要件が整ってない状況で、権利の保全を図るために、とりあえず仮に登記をすることです。
仮登記には対抗力(第三者に権利を主張する効力)はなく、あくまでも権利の順位を保全する順位保全効を有するに留まるので、登記をする準備・条件が整った段階で本登記をする必要があります。
(2)仮登記の種類
(1) 一号仮登記(手続条件不備の仮登記)
登記すべき権利変動は生じているが、登記申請に必要な次の条件のいずれかが揃ってない場合に、登記順位を保全するために行う登記を言います。
- 登記する義務を負う者の協力が得られない
- 権利証を提供できない
- 登記に必要な第三者の承諾が得られない
例えば、売買契約は成立して売主から買主へ所有権が移転したけれども、売主が登記に協力してくれないような場合に行う登記です。(売買契約によって当事者間での権利変動は生じます。しかし、それを第三者に主張するには登記が必要です。)
(2) 二号仮登記
登記すべき権利変動はまだ生じていないが、その権利変動を将来生じさせる請求権を有する場合、又は権利変動が生じるために一定の条件が必要な場合に順位を保全することを目的としてする仮登記です。
例えば、売買予約契約(将来、売買予約完結権を行使することにより所有権が移転する契約)をした場合に、予約完結権を行使するまでの間に仮登記をする場合や、農地の売買(農地法に基づく許可を得ることで所有権が移転します。)の際に、農地法の許可が得られることを条件に仮登記をするような場合です。
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