信託監督人ってなんですか?
信託監督人とは、受益者が現に存する場合に、受益者のために自己の名をもって受益者の権利に関する権利(一部を除く。)の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する者です。
信託管理人は、受益者が現に「存しない」場合に選任される者ですが、信託監督人は受益者が現に「存する」場合に選任される者です。
現に存する受益者が年少者・高齢者又は知的障がい者等の場合、受益者自身が受託者の信託事務を十分に監督することは困難です。そのような受益者に代わって受託者を監督するために信託監督人は選任されます。
信託監督人は信託行為において指定することができ、その指定された者が承諾した場合に、信託監督人として就任することになります。
また、信託行為に信託監督人の定めがない場合や、信託監督人に指定された者がその就任を承諾しない場合などには、利害関係人の申立てにより裁判所が信託監督人を選任することができます。
信託監督人を設置するかどうかは、受託者の能力や信用度、信託財産の内容や管理運用の複雑さ、受益者に成年後見人や任意後見人が選任されているのか、受益者代理人との比較検討などを行った上で判断する必要があります。
なお、信託監督人は、受益者の権限行使を補完する存在であり、信託監督人が選任されていても、受益者は自らの権利を行使することが可能です。
これと比較して、受益者代理人が選任された場合には、信託法92条各号に掲げる権利(単独受益者権)及び信託行為において定めた権利を除き、受益者は権利を行使できないとされています。(詳しくは「受益者代理人ってなんですか?」のページで解説します。)
信託監督人の資格
信託管理人と同様です。
信託監督人の権限
信託監督人は、受託者を監督するために、信託法92条各号の権利(単独受益者権)を行使することができますが、次の①~④の権利は、受益者自身が自己の権利を確保するための権利とされているため、信託監督人はこれらを行使できないとされています。
① 受益権の放棄
② 受益権取得請求権
③ 受益証券発行信託において自らが受益者であることの受益権原簿への記載請求権
④ ③の受益権原簿の記載事項を記録した書面の請求権
また、信託監督人は信託管理人と同様、一部の受益者のためではなく、全ての受益者のためにその権限を行使することが予定されています。
そうなると、複数人の受益者が選任されている場合に、その内の一部の者に監督能力を欠く者がいるとき、信託監督人を選任することができるのか、という問題があります。
これに関しては、否定的・肯定的の両者の見解がありますが、個人的には肯定的な見解に賛成です。
例えば、AとBの受益者がいた場合で、Aは受託者に対する監督能力はあるが、Bにはそれがないという状況の時、Aは自らの利益のためにその権能を行使すれば十分であり、Bの利益の保護まで行うとはなかなか期待できない現実もあります。
そして、信託監督人は全ての受益者の利益のために行動する義務(誠実公平義務等)がある以上、Bのためだけに動くとは考えにくく、このような状況で信託監督人を選任する意義は大いにあると思います。
信託監督人の任務(事務)の終了
信託監督人の任務(事務)は、信託監督人の死亡、辞任、解任等で終了するほか、次の事由によって終了します。
なお、②に関しては、信託行為で別段の定めが可能です。
① 信託の清算の結了
② 委託者・受益者の合意
③ 信託行為において定めた事由の発生
◆参照条文◆
信託法131条~137条