受益権と受益債権の違いは何ですか?
民事信託・家族信託における受益者は「受益権を有する者」を言います。
そして、信託法では「受益権」を次のように定義付けしています。
信託行為に基づいて受託者が受益者に対し負う債務であって信託財産に属する財産の引渡しその他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(以下「受益債権」という。)及びこれを確保するためにこの法律の規定に基づいて受託者その他の者に対し一定の行為を求めることができる権利
条文のままだとわかりづらいですね。
この条文をバラシてみると次の2つに分けられます。
① 信託行為に基づいて受託者が受益者に対し負う債務であって信託財産に属する財産の引渡しその他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(受益債権)
② これ(受益債権)を確保するためにこの法律(信託法)の規定に基づいて受託者その他の者に対し一定の行為を求めることができる権利
①は受益債権と呼ばれ、受益者が受託者に対して信託財産からの給付を求める権利のことを言います。
例えば、信託行為において「受益者に対し毎月10万円を給付する」や「信託財産から必要な教育費を賄うものとする。」等と定められていた場合、受益者は受託者に対してこれらの給付を請求する権利(受益債権)を有します。
また、②に関しては、①の受益債権を保護するために受益者の有する監督的な各種の権利とされています。
例えば、次のような権利です。
・受託者の権限行使違反の取消権
・受託者の利益相反行為の取消権
・信託事務の処理状況についての報告請求権
・信託事務に関する帳簿等についての閲覧、謄写請求権
そして、これらの受益者の有する権利の総称が「受益権」とされています。
つまり、受益債権は受益者の有する権利の一つで、受益権の中に受益債権という権利があるという位置付けになります。
なお、受益権の中でも、信託行為によって制限できない権利は「単独受益者権」と呼ばれています。
◆参考条文◆
信託法2条6号、7号