目的信託とはどのような信託ですか?
目的信託とは、受益者の定めのない(受益者を定める方法の定めがないないものも含む)信託のことで、ある特定の目的を達成することを目的とした信託を言います。
実務的にはそう多くない信託になるかと思います。
設定方法
「信託契約」又は「遺言信託」による方法によってすることができるとされていますが、「自己信託(信託宣言)」による方法ではできません。
信託契約による場合には、委託者が受託者の監督等を行うとされています。
また、遺言信託による場合には、信託管理人の設置が義務付けられ、当該信託管理人が受託者を監督等することとされています。
しかし、目的信託において、委託者と受託者が一致する自己信託の場合だと、受託者の信託事務を監督する者がいなくなってしまうため、自己信託では目的信託を設定できないとされています。
存続期間
目的信託の存続期間は20年を超えることはできません。
目的信託を認めると、財産が流通から隔絶され、処分できる受益権も存在せず、経済的な停滞を招く恐れがあるため、20年という期間を超えることはできないとされています。
受託者の制限
目的信託では、学術・技芸・慈善・祭祀・宗教その他公益を目的とするものを除いて、当面の期間は、政令で定める下記法人以外の者は受託者になることができないとされています。
① 国
② 地方公共団体
③ 一定の要件(※)を満たした法人
※ 純資産額が5,000万円以上・取締役等で5年以内に禁固刑を受けた者や暴力団員であった者がいないこと等
目的信託の活用例
・町内会のお祭り等の催しもののために必要な給付を目的とする信託
・自分の死後のペットの飼育(食事・医療等)を目的とする信託
・大学における研究費用のために資金を供与することを目的とした信託
・地域の福祉・介護・防犯等の環境整備の支援を目的とする信託
など
まとめ
目的信託に関しては、いまだに多くの議論が交わされています。
例えば、ペットのための目的信託においては、わざわざ目的信託という方法を取らずに、通常の信託(世話をしてくれる人を受益者とする等)で対応できるのではないか、ということや、目的信託が設定されることで、委託者の債権者は差し押さえるべき受益権すらも存在しない状況に立たされ、委託者は自己の財産を隔離させた状態に置くなどして信託の悪用をすることなども考えられるとされています。
また、目的信託では、上記を含むその他の弊害を考慮し、一定の制限を加えています。
信託の変更によって受益者の定めを設けることはできないですし、上述した期間制限もそうですし、受託者になれる者が制限されていることも制限の一つです。